【事例紹介】エンジニアの想いが会社を巻き込む。デンソーがロボットコンテストに参加し続ける理由とは(前編)

本投稿は、ETロボコン参加チーム (株式会社デンソー)による活用事例のご紹介です。

自動車業界は、自動車が誕生して以来の大きな変革期にあります。
ソフトウェアの重要性がかつてないほど高まり、特に自動車が様々なデータを生成し、インフラなどとつながり、人流など他のデータ(オルタナティブデータ)と組み合わさることによって利活用が進むことは、自動車会社がモビリティサービス提供会社へと変革し、顧客に対するサービス価値を高めていく上できわめて重要だと言われています。
今回は、先進的な自動車技術、システム・製品を提供する、グローバルな自動車部品メーカーである株式会社デンソー(以下、デンソー)の、ETロボコンを活用した人材育成についてご紹介します。同社は2005年(ETロボコン初回)より教育目的のロボットコンテスト「ETロボコン」に参加しており、大会の趣旨に賛同し、スポンサーとして大会そのものを支援されています。社員の自発的な活動として、長年参加しているこの活動は、会社や社員にどのような効果をもたらしているのか、デンソーでETロボコン活動を支援する福田さんにお話をお伺いしました。

一歩先を行くエンジニアの育成を目指して

自動車業界は、CASE(Connected Autonomous Shared Electric)と呼ばれる環境と安全に関する課題を電動化と自動運転、及びコネクティッド機能によって解決する取り組みの真っ只中にあり、ソフトウェアの役割が相対的に増加してきています。

デンソーではソフトウェアを強化する上で、開発を担うエンジニアの育成に力を入れているそうです。プログラミング同様に、ネットワークインフラやアーキテクチャ設計、プロジェクト・マネージメント、及び管理ツールの知識向上も重視しており、エンジニアが自立的に学べる様、基礎研修から実践教育などの教育システムが取り入れられています。
一方で、これから主流となる大規模なチーム開発では、スペシャリストとゼネラリストが双方の役割を理解し、体制・仕組みに則って開発を遂行することも求められます。「そのような人材を育成することは、学ぶ場の提供だけでは不十分だ」と福田さんは言います。ETロボコンは、エンジニアが組込み技術やソフトウェア開発のスキルを持ち寄り、チームでプロジェクトを進める腕試しの場として有益であると考えているそうです。

エンジニアの飽くなき向上心

デンソーでは企業研修等の業務としてではなく、自己研鑽として16年もの間、毎年ETロボコンへの参加が続いています。なぜETロボコンに参加しているのか、メンバーの参加目的や背景についてお伺いしました。

ETロボコンはモノづくりを体験でき、コンテストという競争の中で組込みソフトウェア開発のスキルを磨いていける貴重な場です。自己研鑽が目的のチーム活動にも関わらず、社内でのメンバー募集の際にETロボコンやETロボコン活動の理念を説明すると、共感してくれる方が必ず居て、結果として毎年出場しています。
メンバーの参加目的は様々で、「業務では実装をする・モノづくりに触れる機会がないからやってみたい」、「業務で今後近い内容をやるから深く知るためにやってみたい」、「ロボコンを通じて挑戦・成功体験をしてみたい」等があります。
ETロボコン出場にあたっては、チームとしての目的である「チャンピオンシップ大会優勝」と、参加メンバー個人個人の参加目的の両方を達成する事が重要だと考えています。チームとして出場する以上、結果を残す事にもこだわろうという事と、その一方でチャンピオンシップ大会に優勝しても自分の目的が達成できていなければ意味がない事をチームメンバーで常に共有して、活動を行っています。具体的には、各自の参加目的ややりたい事を書き出して、それに応じて取り組む内容を決めたり、課題の割当を決めたりしています。

ETロボコンとエンジニア育成の相性が良い3つの理由

チームとして目的を常に共有し、メンバーそれぞれが目的を持って取り組んでいるようです。参加してみて分かったETロボコンの有効性について、3つの観点で教えていただきました。

1つ目は、モデリングや設計、プログラミングを実践して学ぶことができる点です。設計や実装を行う業務を担当している場合は、ETロボコンに参加することで設計や実装をより深く学ぶことができます。一方で、実装はしないが設計やレビューをする等の業務をしていて、知識が必要ではあるが実際にモノを触らないので深く学べる機会がない等、設計や実装を直接担当していない場合も、ETロボコン活動を通じてモデリングや設計、プログラミングのコアな知識を身につけることができます。

2つ目は、画像処理や機械学習のような最新技術に取り組むことができる点です。担当業務で直接関わりがある・なしに関わらず、最新技術を学びたいと思っている若手社員は多くいます。一方で、独学で学ぶのは敷居が高い分野ですので、ETロボコン活動を通じて新しい技術に取り組める事は、ETロボコン参加に対する大きなモチベーションの一つになっていると考えています。

3つ目は、成功と失敗の体験ができる点です。新しい要素(開発手法・進め方・ツール/サービスなど)を取り入れたいと思っても、業務の中で思い切った挑戦をする事には少なからずハードルがありますが、ETロボコン活動では失敗やリスクを恐れずに、試行錯誤したり、挑戦したりしやすい(業務に比べてハードルが低い)です。
実際にETロボコン活動の中では、ある程度の結果を求めつつも、各メンバーの挑戦したい事を重視して取り入れるようにしています。その結果はたとえ失敗したとしても良い経験になり、確実に技術者としての成長に繋がると考えています。

参考リンク


株式会社デンソー コーポレートサイト
https://www.denso.com/jp/ja/

【事例紹介】エンジニアの想いが会社を巻き込む。デンソーがロボットコンテストに参加し続ける理由とは(後編)
https://www.etrobo.jp/denso_part2/

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